審査ラボ β CASE
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解説は隠れています。自分で数字を読み、異常値を見つけ、リスクを推論する。「💭 考察してみよう」カードをタップして、自分の仮説と解説を照合。
対象: 融資担当 2 年目以降 / 深く学びたい方
🎓
ガイド付きモード
全ての解説が開いた状態。赤ハイライトや着目点が常時表示され、「どこを見るか」を学べる。
対象: 初めての方 / 操作の流れを覚えたい方

    💬 審査は「読む」「見る」「聞く」の三位一体。
    中でも最も習得が難しいのが「聞く力」。本研修はそこを磨きます。

    会社概要

    融資審査対象 — 基本情報 + 既存融資状況

    決算書 3 期比較(PL / BS / CF)

    X-2 期 → X-1 期 → X 期(当期、申告ベース)/ 単位 百万円

    月次売上推移(3 期分)

    月次売上 — 3 月単月の集中度に注目

    売上(相対スケール) 金額(千円)

    勘定科目内訳 — 売掛金・棚卸資産

    決算書だけでは見えない、誰にいくら売掛があるのかを確認

    決算書の信頼性 — 税理士交代と決算書乖離

    登場人物

    融資担当者(あなた) + 標準 2 名(大島会長・西村専務)+ 中堅任意の顧問税理士照会(森田) + 1 名の指導者

    採点ルーブリック(森川課長 6 軸評価)

    稟議書・聴取メモを森川課長に提出した時、以下 6 軸 100 点満点で評価されます。

    📊 6 軸ルーブリック(配点 100 点満点)
    森川課長は新人育成のメンター役。各軸を具体評価し、改善コメントと次のアクションを返します。
    配点評価対象満点条件(目安)
    ① 赤フラグ発見 20 EV-A〜H のうち何個発見したか + 数値根拠の明示 EV 8 個以上 + 全て数値で言及(EV 凡例タブ参照)
    ② ヒアリングの質 20 標準 2 名(大島会長・西村専務)の Layer 到達深度 + 資料突合。森田顧問税理士照会は中堅任意(要否判断メモで評価、聞いたこと自体は加点しない) 大島会長・西村専務とも Layer 2 以上、後継者 西村専務は Layer 3(本音 EV-G)。森田照会は任意・例外
    ③ 論点特定 15 本 CASE の核心論点を明確化したか + 相互の関連も記述 4 論点全て論点化、根拠 EV を接続
    ④ 格付見直し提案 15 格付け区分の変更提案、業況スコア減点項目を具体列挙 論点を格下げ根拠として論理接続、参照 EV を明示(格付け基準タブ参照)
    ⑤ 稟議書記述 15 融資判断 + 既存融資対応 + 格付変更の 3 点セット記述、上席が読んで判断できる完成度 3 点セット完備、結論根拠を EV で裏付け、既存融資の保全強化策あり
    ⑥ 融資判断の妥当性 15 新規申込の判断(承認 / 条件付 / 見送り)の妥当性 判断 + 既存融資保全強化 + 回収/モニタリング計画の 3 点セット
    🎯 合格ラインの目安
    70 点以上: 合格(新人レベル合格)
    85 点以上: 優秀(若手レベル合格、本部審査部進達品質)
    55 点未満: 再チャレンジ推奨

    ※ 森川課長は新人育成型のフィードバック「まず良い点を認める → 改善点を具体的に → 次のアクションを提案」を徹底するため、減点だけで終わらない講評を返します。

    格付け基準クイックリファレンス

    金融庁 金融検査マニュアル別冊(中小企業融資編)に基づく自己査定区分。本案件での想定回答は 稟議書 ④ 格付見直し提案 の項目で参照してください。

    🏷️ 自己査定区分の早見表
    本案件の判断材料を「主な指標」列で確認しながら、稟議書 ④ 格付見直し提案を組み立ててください。
    区分定義主な指標
    正常先 1〜6 格 業況良好、財務内容に特段問題なし、今後も安定継続見込み 債務償還年数 10 年以内、自己資本比率 健全、利益計上継続
    要注意先 7〜8 格 業況低調、財務内容に問題、債務履行に懸念、経営者の誠実性に疑義あり 債務償還年数 10-20 年、業況悪化傾向、決算書信頼性に重大疑義
    要管理先 9 格 正常返済から 3 ヶ月超延滞 or 貸出条件緩和(リスケ)実行 延滞、リスケ実行、業況著しく悪化
    破綻懸念先 10 格 経営困難、債務履行に重大な懸念、自助努力では再建困難 債務超過、債務償還年数計算不能、慢性的赤字
    ⚠ 営業店からの「申し送り」の実務
    格付の最終判断は本部審査部・与信統括部。営業店からは格下げを「申し送り」として稟議書に記載するのが実務。本案件の核心となる EV を 1-2 個取得すれば、要注意先以下への申し送りが妥当となるケースが多い。

    ※ 詳細な格付定義は金融庁「金融検査マニュアル別冊(中小企業融資編)」、各銀行の自己査定基準を参照。本 LP は学習用の簡易版です。

    証拠 ID 凡例(CASE 11)

    本 CASE で取得すべき赤フラグ・証拠を識別子で管理しています。資料閲覧やヒアリングで EV-A〜H を順次発見していきましょう。採点 ① 赤フラグ発見軸では、何個発見できたかが評価されます。

    📑 証拠 ID と取得経路
    資料分析で取得できる EV と、ヒアリング(キャラ別)で取得できる EV があります。関係者証言(💬)はヒアリングで段階的に引き出す証言です。
    ID内容取得方法種別
    EV-A時価純資産法評価 3.8 億円決算書 + 不動産鑑定
    EV-BDCF 評価 4.5 億円(M&A 仲介推奨)M&A 仲介レポート
    EV-CSPC 借入の返済負担(返済原資=事業会社の配当・経営指導料、債務償還年数 8.5 年)返済計画・事業計画書
    EV-D退職金功績倍率計算(6,000-8,000 万円レンジ)税務基準
    EV-E新経営者 西村氏の個人財務状況(資産 3,500 万円、負債 1,800 万円)個人資産調書
    EV-F森田税理士「退職金 業績連動で 6,000-8,000 万円が相場、純資産法採用が無難」証言森田 Layer 2
    EV-G西村「本音で株価 DCF 4.5 億、退職金 8,000 万は過大」証言西村 Layer 3💬 関係者証言
    EV-H経営者保証ガイドライン 3 要件の該当性実務指針
    💡 関係者証言(💬)取得のコツ
    関係者証言を引き出すには威圧調・告発要求では永遠に届きません。誠実な姿勢 + 立場理解 + 段階的な質問を 3-4 ターン重ねるのがカギ(各キャラのプロフィールと panel_intro_body_html の質問例を参考にしてください)。

    ※ EV ラベル(EV-A 等)は資料タブ・ヒアリング想起ツール・採点ルーブリックで参照されます。

    粉飾類型 凡例

    中小企業地銀融資で頻出する代表 6 類型(本シミュ収録分) — メモ ① ④ で「想起される類型」として引用してください
    ⚠️ 他にも架空仕入・引当金不計上・簿外債務・減価償却操作など多数の類型があります。全てを網羅していません。

    📚 出典
    中小企業粉飾倒産レポート(帝国データバンク等の業界調査)、ACFE Fraud Tree(米国不正検査士協会の不正分類フレームワーク)、監査基準委員会報告書 240(不正に関するリスク対応)などを参考に、中小企業地銀融資で頻出する類型を抽出。融資審査では「異常値 → 想起される類型」を必ずペアで考えるのが定石です。
    類型名典型的な手口融資審査での着眼点
    期末売上押込 翌期出荷予定の売上を期末月(主に 3 月)に前倒し計上 3 月単月売上比率の異常 / 直前 2 月の急減 / 期末仕訳量の急増
    売上前倒し計上 検収前・出荷前の案件を売上計上(進行基準悪用含む) 納品書/検収書 vs 仕訳の日付乖離 / 売掛回収サイトの異常長期化
    架空売上(循環取引) 実態のない売上を計上、関連会社や友好取引先と循環 新規取引先への急激な売掛集中 / バーチャルオフィス / 入金実績なし
    在庫水増し / 評価減未計上 滞留品を簿価維持、実地棚卸を粉飾、評価減を意図的に先送り 棚卸資産回転日数の悪化 / 売上原価伸び率との乖離 / 工場現地視察拒否
    経費先送り / 仮払先送り 当期経費を翌期に先送りし利益かさ上げ、仮払金で経費を隠蔽 仮払金/前払費用の異常残高 / 期末月の仕訳バランスの不自然さ
    関連会社利用 / 役員貸付 関連会社への貸付・割高賃借料・役員貸付で資金を社外流出 関連会社売掛/貸付の急増 / 役員貸付金の累増 / 賃借料の同業比較
    💡 メモへの引用方法
    ① 赤フラグ識別では「観察 → 数値根拠 → 想起される類型(類型名)」のセットで書きます。 ④ 検証後の確定仮説では「粉飾あり判定の場合、該当する類型名(複数併発もあり)」を明記。 単独類型ではなく 複数類型の併発 も中小企業粉飾では一般的です。

    📐 粉飾の 3 つの数学的メカニズム

    類型を 暗記 せず、構造 で覚えるための軸。粉飾はすべて「試算表の借方/貸方を変化させて利益を増やす操作」に帰着します。下の 3 メカニズムのどれに該当するかを意識すると、初見の類型でも検出方針が立ちます。

    メカニズム操作内容該当する代表類型
    ① 資産 ↑ × 費用 ↓ 本来当期費用化すべきものを資産計上、または滞留品の評価減を見送り 在庫水増し / 評価減未計上、経費先送り(仮払金 / 前払費用化)、未成工事支出金水増し、減価償却の過少計上
    ② 資産 ↑ × 収益 ↑ 架空または翌期取込の売上を計上し、その売掛が資産に残る 期末売上押込、売上前倒し計上、架空売上(循環取引)
    ③ 負債 ↓ × 費用 ↓ 本来計上すべき負債(引当金等)を計上せず、対応する費用も認識しない 引当金不計上 / 過少計上(貸倒・賞与・退職給付)、簿外債務
    💡 なぜこの軸が効くのか
    類型名(例:期末売上押込)を覚えるのは一見便利ですが、現実の粉飾は 複数類型の併発業界特有のバリエーション があり、暗記では対応しきれません。「結局どの 借方/貸方 を動かしているか」を構造で押さえると、未知の粉飾にも対応できます。
    例えば「関連会社利用 / 役員貸付」は単独では利益操作ではありませんが、「割高賃借料(費用 → 負債/貸借)を関連会社で受け止め、関連側で売上として再計上」という形で ② 資産 ↑ × 収益 ↑ の発生源になります。

    💡 数値メカニズム ミニ演習(3 問)

    会計学の基本原理だけで解ける独自演習。粉飾の数学的構造を 5 分で体感してください(社名・数値はすべて架空)。

    📘 演習 1:在庫粉飾の仕訳メカニズム

    ある中小製造業の X 期決算で、実地棚卸額は 80 百万円 でした。経営者は「期末在庫を 100 百万円 として計上したい」と指示しました。

    Q. この粉飾で計上される仕訳は何か。利益はいくら増えるか?

    ▶ 解答を見る
    仕訳:(借)期末棚卸高 20 / (貸)売上原価 20 (単位:百万円)
    結果:売上原価が 20 減るため、売上総利益が 20 増加
    メカニズム:① 資産 ↑ × 費用 ↓。資産(棚卸資産)が 20 増え、費用(売上原価)が 20 減って、両方利益増の方向に動く。
    検出のヒント:売上原価伸び率 vs 売上伸び率の乖離、棚卸資産回転日数の悪化、工場現地での滞留品実在性確認。
    📘 演習 2:売上と売掛の同時粉飾

    ある中小機械商社の X 期末。経営者は「Y 社との取引 50 百万円 を売上計上したい」と指示しました。実際には Y 社への商品引渡しも入金もありません。

    Q. この粉飾の仕訳と貸借対照表への影響、そして検出の糸口は?

    ▶ 解答を見る
    仕訳:(借)売掛金 50 / (貸)売上 50 (単位:百万円)
    B/S 影響:資産(売掛金)+ 50、収益(売上)+ 50 → 売上総利益 + 50。
    メカニズム:② 資産 ↑ × 収益 ↑
    注意:売上・売掛が同じ金額で増えるため、決算書だけ見ると整合的に見える。
    検出の糸口:
    営業 CF(現金は入っていないので CF はマイナス側に動く)
    ・売掛回転日数の長期化(50 が滞留)
    ・Y 社からの過去入金実績の確認(初回取引なら与信調査)
    ・納品書・検収書と仕訳の突合
    📘 演習 3:複数科目への分散粉飾

    ある中小卸売業の総資産は 500 百万円。経営者は「単一科目で大きく粉飾すると目立つ」と判断し、10 科目 に分散して 各 1%(5 百万円) ずつ粉飾しました。

    Q. 総粉飾額はいくらで、各科目を個別に見ても気付けるか?

    ▶ 解答を見る
    総粉飾額:5 × 10 = 50 百万円(総資産の 10%)。利益への影響も同程度に達する。
    各科目単独では各 1% 増にすぎず、通常の異常値検出(前期比 +20% 等のしきい値)には引っかからない。
    検出のヒント:
    営業 CF と当期純利益の乖離(現金は伴わないため CF に出る)
    ・複数科目の 合計 での横断分析(在庫 + 売掛 + 仮払金 + 前払費用 + 建設仮勘定 等の合算推移)
    同業他社比較 での総資産構成比の乖離
    5 期以上の長期トレンド(3 期では見えない緩やかな積み上げが見える)
    → 単一指標で見抜こうとせず、複合的に見る 訓練が必要。

    ※ 全 CASE 共通の凡例です。全 6 類型が全 CASE で発生するとは限りません。各 CASE では 証拠が揃った類型のみ をメモに記載してください(根拠なき類型推測は減点対象)。各 CASE のメインテーマに対応する類型 + 副次的な類型併発があります。

    📚 より広い分類を学びたい方は ACFE Fraud Tree(米国不正検査士協会) もご参照ください。

    💼 銀行審査担当者のためのヒアリング技術ガイド

    本 LP の核心スキル。融資審査だけでなく、会計士・税理士・コンサル・記者など 事実確認を職業とする全領域 で通用する技能

    🎯 ガイドの位置付け
    本ガイドは 銀行審査担当者の立場 に特化したヒアリング技術集です。一般的なジャーナリスト技法・セラピー的傾聴・FBI 交渉術には、銀行員役には不適切なものが含まれます(時間制約・形式的役割・コンプライアンス・継続関係などの理由)。本 CASE のヒアリングはこのガイドに沿って組み立ててください。

    ⭐ 銀行員として効く 10 の質問技法

    #技法例文なぜ効くか
    1📄 資料引用質問「決算書 No.7 の売掛金内訳明細にあるケーディー精工 58M ですが、回転日数 180 日の計算根拠を教えてください」銀行員は資料を持っているという立場が確立されている → 資料引用が自然で抽象逃げを封じる
    2📊 数値・期間アンカー「3 月単月 22%(334M)、過去平均 9.4% との乖離について」具体数値が抽象逃げを封じ、銀行員の専門性も同時に示せる
    3🔄 クロス参照質問「社長は『新規 2 社は営業ルートで』と仰いましたが、田村さんは『紹介資料なし』とのこと。経理側で把握されている経緯は?」個別証言の信頼性を、組織内整合性で検証する
    4📅 時系列照合質問「前期の経営計画では売上 1,200M、実績 1,520M で +27% の上振れ。当初想定にない要因は?」計画 vs 実績の乖離は事業実態を映す。創作余地を限定する
    5🏭 同業比較質問「同規模の精密部品加工業では売掛回転 45-55 日が一般的ですが、御社の 77 日の要因は?」銀行員の専門性を活かす。業界事実なので相手も否定しにくい
    6💭 仮説の率直な開示「正直に申し上げますと、3 月集中の主因として 期末売上押込の可能性を頭に置いています。違っていればその通りお伝えください」抽象逃げを封じ、相手に正誤判定の機会を与える(訂正情報が出る)
    7🔧 プロセス問い「毎月の月次決算で、売上計上の社内承認プロセスを教えてください」プロセス自体から矛盾が見える(「社長承認のみで証憑不要」等が露見)
    8📑 検証可能性質問「ご説明いただいた件、裏付け資料(納品書控え・検収書等)はございますか?」口頭証言だけでは稟議書に書けない。資料での裏取りを促す
    9🤔 静かな指摘「決算書では棚卸 220M、内訳明細では積み上げ 145M。差分 75M があるように見えますが、私の理解が違っていれば訂正ください」断罪ではなく自己訂正の機会を与える。退路をつくると説明できないと矛盾顕在化
    10🚪 退路つき深掘り「公開済みの範囲、または税務署が把握済みの範囲で結構ですので、X-1 期末の意見相違の経緯を…」守秘義務・職業倫理がある相手に話せる場を作る。銀行が正当な業務として確認している枠組みを示す

    ⛔ 銀行員として絶対避けるべき 12 のパターン

    🚫 致命的に NG(関係破壊・コンプライアンス違反)
    • 1. 直接的な不正断罪 ❌「これって粉飾ですよね?」 → 名誉毀損リスク + 関係破壊
    • 2. 守秘の安易な約束 ❌「社内には言いません」 → 銀行員には本部報告義務、守れない約束はコンプラ違反
    • 3. 他顧客情報の漏洩 ❌「○○製造でも似た事例が」 → 銀行守秘義務違反
    • 4. 前任者批判 ❌「前任税理士は怠慢でしたね」 → 業界内で銀行の評判低下
    ⚠️ 効果が出ない・逆効果(改善余地)
    • 5. 抽象すぎる業況質問「業況は?」 → 何でも答えられる(自由度 100%)→ 数値で挟む
    • 6. 権威誇示「本部としては」「金融庁が」 → 反発を招く
    • 7. Why の連発「なぜ?なぜ?」 → 詰問に聞こえる、How / What に置換
    • 8. Yes/No 質問の連発「正しいですか?」 → 「はい」しか返らない
    • 9. 同質問の繰り返し(3 回以上)→ 不信感増幅
    • 10. 複合質問(1 質問に複数論点)→ 認知過負荷
    • 11. 専門用語の連発「DCR、ICR、SDB、PD/LGD」 → 距離が生まれる
    • 12. 過度な共感(セラピー風)毎ターン「お辛いお気持ち」 → 操作的に見える、信頼喪失

    💡 銀行員ヒアリングの 6 大原則

    #原則説明
    1資料を盾に質問する「裸の質問」より「資料引用つき質問」の方が遥かに強い。決算書・内訳明細・登記資料を手に持って指で示しながら聞くイメージ
    2証言は資料で裏取りする口頭証言だけでは稟議書に書けない。「裏付け資料はありますか」を必ず確認
    3守秘の約束はしない「社内には言いません」は不可能な約束(本部報告義務)、コンプライアンス違反
    4長尺の感情労働は避ける銀行員はセラピストではない。雑談 5-10 分のラポール構築は OK だが、それ以上は形式的役割と不一致
    5継続関係を念頭に大半は既存顧客で次回も会う。完全な関係破綻は避ける(全力で詰めて拒絶されると次回が無くなる)
    6断罪ではなく確認「粉飾でしょう?」(断罪) ではなく「整合性に疑義があるので確認させてください」(確認)。同じことを聞くのでも姿勢が違う

    🎯 採点との関係

    森川課長(レビュー担当)は本ガイドの 10 技法・12 NG パターン・6 大原則 に照らして 軸 ② ヒアリングの質(20 点) を評価します。良い質問は具体的に引用して褒め、改善余地は書き換え案つきで指摘します。本ガイドを意識してヒアリングを組み立ててください。

    📚 参考
    本ガイドは Cognitive Interview(認知面接法、Geiselman & Fisher)、PEACE Model(英国警察)、Motivational Interviewing(Miller & Rollnick)、Active Listening(Rogers)、Tactical Empathy(Voss、FBI)、SPIN Selling(Rackham)、AICPA Forensic Interview Standards 等の知見を 銀行審査担当者の立場と制約に合わせて再構成 したものです。

    ⚠️ 警戒シグナル チェックリスト

    個別のヒアリング技法とは別軸の 俯瞰的な警戒指標。融資先全体を眺めて以下のサインが複数同時に立っている場合、深掘りヒアリングの優先度を上げる判断材料に使ってください。

    #シグナルなぜ警戒すべきか
    S-1社長が異常に強気(資金繰り懸念がないと頻繁に強調)業績が良ければ強調する必要がない。「強調」自体が懸念の裏返しのケースが多い
    S-2他金融機関の低金利提案が複数(借換攻勢)新規取引銀行は財務分析が浅く飛びつきがち。粉飾を見抜けない他行が条件で攻めてくる構図
    S-3内訳明細書に新規金融機関名が増加既存銀行が引き気味になり、新規行で穴埋めしているサイン。資金繰り悪化の表面化
    S-4顧問税理士・会計士が交代(直近 1-2 期)意見相違による辞任の可能性。職業倫理上、粉飾を是正できず撤退するパターンの典型
    S-5経理担当者の同席を社長が渋る経理側の証言と社長説明の齟齬を恐れている可能性。クロス参照を避けたい心理
    S-6工場・倉庫の現地視察を理由をつけて拒否滞留在庫・架空在庫の実在確認を回避したい。在庫水増し疑義の強いシグナル
    S-7同業他社水準と乖離する数値を「うちは特殊」で説明説明の論理性ではなく「特殊性」で逃げている。検証可能性が低い
    S-8関連会社・関連取引が多い、または増加利益移転・損失隠蔽の受け皿として関連会社が機能している可能性
    S-9役員報酬・役員貸付金が増加トレンド同族経営では、収益力向上は 利益増ではなく役員報酬増 に表れる。逆に役員貸付増加は資金流出のサイン
    S-10短期借入金が利益増を上回って増加利益が出ているはずなのに資金繰りが苦しい矛盾。粉飾利益と実態 CF の乖離の表れ
    S-113 期だけ見ると好調、5 期遡ると赤字計上した期がある粉飾会社も気が緩んで赤字を出した期がある。赤字期の指標こそが実態 の可能性が高い
    S-12「内部留保で資金繰りは盤石」を強調するが営業 CF はマイナス過去利益 = 内部留保は事実だが、過去利益自体が粉飾なら内部留保も虚像。営業 CF は嘘をつかない
    🎯 シグナル運用ルール
    1 個では判定しない。3 個以上同時に立つときに本格的に深掘りヒアリングへ。
    ・最重要なのは S-4(顧問交代)・S-6(現地視察拒否)・S-11(長期赤字期)・S-12(営業 CF マイナス継続)。これらは単独でも要警戒。
    「シグナルが立っている = 粉飾」ではない。健全企業でも S-1 や S-9 は普通に発生する。あくまでも 深掘りヒアリングの優先度判断 に使う指標。

    🔢 SDB 格付ロジック早見表

    Self-Determined Borrower(自己査定債務者)区分。各銀行で重み配分は違うが、業況スコア + 財務スコアの合算で格付を機械的に算出するのが共通ロジック

    📚 SDB とは
    Self-Determined Borrower の略。金融庁「金融検査マニュアル別冊(中小企業融資編)」の自己査定区分。業況スコア(質的)+ 財務スコア(量的) を合算して格付を決める方式が一般的。各銀行で重み配分(例: 業況 30 / 財務 70 や 40/60)は異なります。本ガイドは 本研修の想定 X 銀行版 です。

    🏷️ 格付テーブル(本研修の想定 X 銀行版)

    区分合算スコア(目安)定義
    正常先1〜3 格85 点〜業況・財務とも極めて良好
    正常先4〜5 格70〜84 点業況・財務共に良好、本案件 初期格付
    正常先6 格60〜69 点業況やや低調 or 財務やや弱い、要観察
    要注意先7 格50〜59 点業況低調 or 財務に問題、債務履行に懸念
    要注意先8 格40〜49 点業況悪化 + 財務悪化、特に注意必要
    要管理先9 格30〜39 点正常返済から 3 ヶ月超延滞 or リスケ実行
    破綻懸念先10 格20〜29 点債務超過、債務償還年数計算不能、慢性的赤字
    実質破綻先11 格10〜19 点営業停止状態、清算予定
    破綻先12 格〜9 点法的整理、債権回収不能

    📊 業況スコア(質的、配点 40)

    項目配点主な減点要因(例)
    経営者の誠実性10決算書信頼性疑義 / 説明の整合性欠如 / 質問への論点すり替え多発
    業界動向 / 市場性8業界全体の縮小トレンド / 競合激化 / 規制強化
    主要取引先 / 与信集中81 社依存度高 / 親事業者の業況悪化 / 新規取引先の与信不明
    競争力 / 製品優位性6差別化困難 / 価格決定力なし / 技術陳腐化
    事業承継 / 経営体制4後継者不在 / 経営者高齢 / ガバナンス欠如
    従業員 / 組織4離職率高 / 専門人材不足 / 労務管理不備

    📈 財務スコア(量的、配点 60)

    項目配点満点条件 / 減点目安
    自己資本比率1250% 以上で満点 / 30% 未満で半減 / 20% 未満で大幅減点
    債務償還年数145 年以内で満点 / 10 年超で減点 / 計算不能で大幅減点
    営業利益率10業界平均以上で満点 / 赤字で大幅減点
    営業 CF / 純利益 整合8営業 CF と純利益が整合 / 大幅乖離は P/L 信頼性疑義として減点
    運転資本回転(売掛・棚卸)8業界水準内 / 急変動・水準超過は減点
    金利負担能力(ICR)4営業利益 ÷ 支払利息。3 倍以上で満点 / 1 倍未満で大幅減点
    有利子負債 / EBITDA43 倍以内で満点 / 6 倍超で大幅減点
    💡 メモ ⑤ 実態財務試算 (8) 格付提案の書き方
    「業況スコア」「財務スコア」のどの項目を何点減点したか、理由とセットで列挙。
    例:
    ・業況スコア: 経営者の誠実性 △6 点(理由: 決算書信頼性に疑義 + 説明整合性欠如)
    ・財務スコア: 自己資本比率 △6 点(実態 30% 未満) + 債務償還年数 △10 点(計算不能)
    合計 △22 点 → 75 点(現行)→ 53 点 → 要注意先 7 格

    ※ 各項目の正確な配点は銀行ごとに異なります。本タブは学習用の目安です。

    🔧 既存融資対応 実務ガイド

    稟議書 ⑥ で「既存融資対応」を書く際の判断基準と実務ヒント

    📋 既存融資対応の 3 領域
    既存融資対応は「(a) 当座貸越枠の取扱い / (b) 既存タームローンの取扱い / (c) 担保 + モニタリング」の 3 領域で組み立てます。粉飾疑義レベルに応じて段階的に強化します。

    (a) 当座貸越枠の取扱い

    状況標準対応留意点
    粉飾疑義なし、業況良好枠維持定期見直し時に増減
    業況やや低調、疑義は限定的枠維持 + 期中モニタリング強化(月次試算表提出)「期中モニタリング条件」を稟議書に記載
    粉飾疑義あり、確認中枠減額(例 5,000万 → 3,000万)or 段階的に圧縮取引先への急激減額は関係破壊。事前協議
    粉飾疑義濃厚 + 既往未払いあり枠即時凍結 + 既往返済優先同業他行も同調する可能性あり、横並び監視
    破綻懸念先相当枠停止 + 期日繰上請求も検討本部審査部 + 法務部協議必須

    (b) 既存タームローンの取扱い

    状況標準対応留意点
    期日内返済が見込める履行モニタリング(資金繰り表月次提出)強化条項を追加するなら覚書を新規作成
    期日延長要請がある条件変更稟議(担保再評価必須)リスケ扱いになると「要管理先」格下げトリガー
    粉飾疑義 + 期日内返済不安担保再評価 + 増担要請 + 経営者保証強化増担要請は経営者の反発を招くので調整必要
    破綻懸念先相当期限の利益喪失通知 + 法的整理視野本部 + 法務部 + 弁護士協議必須

    (c) 担保 + モニタリング

    項目判断基準
    不動産担保 再評価路線価 or 市場価格再算定 + 掛目見直し(平常時 70% → 疑義時 50%)。粉飾疑義濃厚なら直近 1 年以内に再鑑定取得
    売掛債権担保(ABL)架空売掛の可能性があれば実質無価値扱い。新規 ABL 設定は粉飾疑義中は控える
    在庫担保(ABL)水増し疑義中は実質無価値扱い。実地棚卸後の正味簿価で評価
    経営者保証経営者保証ガイドライン適用要件を再確認。粉飾疑義中は保証維持・強化が原則
    資金繰りモニタリング月次試算表 + 資金繰り表 + 主要取引先別売掛回収実績 を月次提出させる
    自己査定申し送り次回自己査定での格下げ可能性を稟議書に記載(「次期で要管理先 9 格 or 破綻懸念先 10 格への格下げ可能性」)
    💡 メモ ⑥ 既存融資対応の書き方
    以下のテンプレで書くと上席が判断しやすい:

    当座貸越: 現枠 X 千万円 → 提案 Y 千万円(理由: 粉飾疑義 + 期中モニタリング強化)
    既存ターム: 残高 X 億円。期日内返済をモニタリング条件「月次試算表 + 資金繰り表提出」付で履行
    担保: 不動産担保再評価(掛目 70% → 50%)+ 経営者保証強化
    モニタリング: 月次試算表・資金繰り表・売掛回収実績を提出。次回自己査定での格下げ可能性も申し送り
    判断根拠: 実態財務試算で営業 CF X M、債務償還 Y 年(or 計算不能)→ 履行に重大懸念

    ※ 具体的な掛目・閾値は銀行ごとに異なります。本ガイドは学習用の目安です。実務では各銀行の与信規程を参照してください。

    使い方

    この画面を最大限に活用するには

    基本のフロー(現場の流れを再現)

    1. 左サイドバーから 「会社概要」 を選び、対象企業を把握する
    2. 右上の 「作業パネル ▶」 をクリックして右側にパネルを展開
    3. 作業パネルで 💬 ヒアリング タブを開き、関係者に質問しながらメインの資料を読む
      → 現場の「関係者ヒアリング」に相当
    4. 質問中に気付いたことを 📝 メモ タブに即書き込む(自動保存)
      → 現場の「稟議書(案)起案」に相当
    5. メモが書けたら ✅ レビュー タブに切り替えて、レビュー担当(AI) に見てもらう
      → 現場の「支店長決裁 + 本部審査部進達前の課長レビュー」に相当

    よくある質問

    メモは保存されますか?

    はい、書いた内容は自動的にブラウザに保存されます(localStorage)。同じブラウザで戻ってくれば続きから書けます。

    ヒアリングは何回もできますか?

    何度でも可能です。作業パネルの 🔄 ボタンで会話をリセットできます。ただし API コストがかかるため、運営では一定の利用制限を置く場合があります。

    モバイルでも使えますか?

    使えます。画面が狭い端末では、作業パネルが下から出てくる「ボトムシート」形式になります。可能であれば PC 推奨。

    免責: 本教材に登場する企業・人物・取引・金額はすべて架空であり、実在のいかなる団体・個人・事件とも関係ありません。
    🎯 ヒアリング動線の確認